アメリカでは、大きな病気をすると本当に破産します。誇張ではなく、個人の自己破産の原因として医療費が上位に来る国です。
アメリカに長く住んでいて、いちばん怖いのは病気そのものより請求書です。今回はその現実についてまとめます。
なぜアメリカの富裕層は、あれほど健康に執着するのか
アメリカ人といえばハンバーガーとピザ、というイメージがあると思います。実際そうなのですが、太っているのは主に低所得層です。
- 所得の低い層 … 安価なジャンクフードや加工食品で食事を済ませる
- 富裕層・エリート層 … オーガニック野菜、パーソナルジム、徹底した体調管理
意識が高いから健康に気を使っている、という話ではありません。病気になったときに失うものが大きすぎるからです。
実際にかかる費用の感覚
動画内で触れた、アメリカでよく語られる金額の目安です。
- 救急車を呼ぶ … 20〜30万円ほど(日本のように無料ではありません)
- 手術 … 100万円〜数百万円
- がんの治療 … 数千万円
SNSでは、絆創膏を貼っただけで629ドル請求されたという投稿が定期的に話題になります。道で人が倒れていても「救急車は勘弁してくれ、Uberを呼んでくれ」と言う、という話も冗談ではありません。
この記事の数字について
ここに挙げた金額は、動画内で語られた「よく言われる目安」です。実際の費用は州・病院・加入している保険・年によって大きく変わります。正確な金額は、必ずご自身の保険会社や医療機関にご確認ください。
「保険に入っていれば大丈夫」ではありません

ここがアメリカの医療制度でいちばん理解しにくいところです。保険に入っていても、破産する人は破産します。
① 会社によって条件が全く違う
大手IT企業のような会社に勤めていれば、保険料の7〜8割を会社が負担してくれて、自己負担は月に100〜300ドル程度で済みます。
一方、会社の補助がないフリーランスや自営業は事情が違います。日本の国民健康保険のような受け皿がないため、家族4人で月1,500〜2,500ドルという水準になります。家賃と変わりません。
② 免責額(ディダクティブル)という仕組み
これが厄介です。年間の医療費が一定額に達するまでは、保険に入っていても全額自己負担という契約が一般的です。
その基準が5,000ドルなら、そこに届くまでは何回病院に行っても全部自腹。毎月数十万円の保険料を払っていてもです。
③ サプライズビル
「この病院は自分の保険が使える。でも担当した麻酔科医は保険のネットワーク外だった」——それだけの理由で、突然高額な請求が届きます。
患者が事前に見分けるのは、ほぼ不可能です。
病院に行くと、まず「これは保険が効きますか」から始まる
私はあまり病院に行かないので、たまに行くと毎回混乱します。
診察を受けて「ではスキャンしましょう」と言われる。まず聞くのは「それは保険でカバーされますか」です。ところが医者は値段を知りません。「請求部門に聞いてくれ」と言われます。
請求部門に聞くと「保険会社に聞いてくれ」。保険会社に電話すると「請求コードは何番ですか」。また病院に電話する。これを患者本人がやります。
それでも生き延びる方法があります

高額な保険に入れない人たちが、実際に取っている手段です。
- クラウドファンディング … 募金サイトで治療費を集める。医療目的の募金が大きな割合を占めます
- 国境を越える … 処方薬を求めてメキシコへ。国境沿いの薬局はアメリカ人で混み合うそうです
- ERの利用 … 救急救命室は支払能力を理由に診療を拒否できないため、そこに駆け込む
- 自己流の対処 … 人間用の薬が買えず、成分の近いものを代用するといった話まであります
先進国でこうした状況が常態化しているのは、アメリカくらいだと言われています。
なぜ変わらないのか
日本とアメリカの決定的な違いは価格のルールです。日本は国が医療費の価格を定めています。アメリカにはその規定がほとんどありません。
つまり製薬会社や病院が価格を決められます。ヨーロッパで1万円で売られている薬が、アメリカでは桁違いの値段になることがある。それでも患者は買うしかありません。
アメリカの医療費はGDPの2割近くを占めるとされ、すでに国家経済を支える一大産業です。これだけ巨大な金が動く産業を、政治が簡単に変えることはできません。国民皆保険を作ろうとする政治家が現れるたびに、大規模な反対キャンペーンが起きてきました。
実際に届く請求書の話

最近、友人が盲腸になりました。届いた請求は3万ドル。日本円で約500万円です。
しかも一度に来るのではありません。入院費、手術費、薬代、麻酔代、診察料……バラバラに、毎日のように届きます。合計するとその金額になる、という届き方です。
請求額は交渉できます
意外に思われるかもしれませんが、この請求額は交渉の余地があります。病院側も回収したいので、「払えない」と伝えると金額を下げてもらえることがあります。
保険なしで緊急の手術を受けて数百万円の請求が来た人が、交渉して数十万円まで下げてもらったという話はよく聞きます。アメリカ旅行中に手術が必要になった方も、まず焦らず病院と話し合ってください。
まとめ:健康第一、これに尽きます
アメリカはたくさんのお金を稼げる国かもしれません。ただ病気をした瞬間に、それが全部吹き飛ぶ可能性がある国でもあります。
「自分がどうなるか」より先に「これはいくらかかるんだろう」と考えてしまう。このストレスは相当なものです。
日本の国民皆保険がどれだけありがたい仕組みか、アメリカに住んでいると本当によく分かります。そして結局のところ、健康でいることがいちばんのコスト削減です。
この記事の動画
高額医療費で人生終了するアメリカ人。息するだけで破産する異常な医療システムがヤバすぎる【アメリカの闇】
請求書が毎日バラバラに届く話や、病院と保険会社をたらい回しにされるくだりは、実体験として聞いたほうが生々しさが伝わります。21分の本編でどうぞ。
アメリカ・カリフォルニアでの日常を毎週お届けしています。ほかの動画は パジメのチャンネル からどうぞ。
